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死の町

2018/ 07/ 24
                 

映像製作の専門学校がありまして、私はそこで講師の助手のような仕事をしています。
1年生の授業で、
『カメラを渡され、講師が決めたテーマに沿った映像を、次の授業の日までに撮ってくる』
というものがあるんです。
で、その先生が第一回の授業で課題に出すテーマは、いつも同じだったんですよ。
『死んだ街』というテーマなんです。
で、この授業の狙いは、
『顧客の漠然とした要求に、いかに具体的な映像で答え納得させるか』みたいな事を勉強する授業で、
今回の死んだ街の場合なら、一番ベタなのは、寂れて見えるような映像を撮ってくれば良いわけです。
でも生徒は皆、まだ学校に入ってから半年程度しかたってない、素人同然の人間ですから、
そんな意図はなかなか汲み取れないわけです。
だから、結構変なものをみんな撮ってくるんですね。
死んだ虫撮って来たり、自殺する人の短編ドラマ作ってみたり。

その生徒が撮って来た映像の中に、一つ妙なものが混じってた、という話なんです。
その映像には『別館』と呼ばれている、うちの学校の敷地内のビルが映っておりまして、
夕暮れ時に生徒がカメラを持って、そのビルの中を歩きながら、
ここで女が自殺して幽霊が云々、という話を延々とするというもの。
まあなんとなく、実話怪談モノのような、趣のある変な物だったんです。
オチが結構よく出来てまして、
最上階の教室で怪談話を語り終わった後で、
カメラが突然アングルを変えて固定されて、画面の上の方に窓が映るんですが、
その窓の外に女が張り付いてるんですよ。
窓に手を押し付けるようにして。
要するに、『幽霊話してたら幽霊が出ちゃった』というオチをつけたんだと思って、感心したんです。
外も暗くなってきたし、カメラのピントがその女に合ってないから、
表情なんかもちょっとぼけててわからなくて、
それがまた幽霊っぽくて、なんとも怖いんですね。

それで次の授業の後に、
「この前のアレ、テーマからは外れてたけど面白かったじゃないか」
なんて言って、それを撮った生徒と話したんですよ。

そうして話しているうちに、妙な事に気付いたんです。
彼、「窓の外の女のことは知らない」って言うんですよ。
「確かに、そのビルで怪談話をしながら撮ったんだけど、
 オチの後のその窓が映るカットは、
 単に撮影を終えてカメラを地面に置いた時に、録画スイッチを切り忘れただけで、
 荷物を片付け終わった時に、カメラが回っていることに気付いてカメラを止めたんだけど、
 まだ自分は編集機材は使えないし、上から他の映像かぶせるのも変だし、
 そのままにして課題提出しちゃっただけだ」って言うんですね。

私はてっきり、その生徒が僕を怖がらせようとして、オチの事をはぐらかしてるんだと思って、
「あの女の子彼女?」とか、
「あんな高い所の窓の外に立たせたりして、よく怒られなかったなー」とか、からかってたんです。
そうしたら、彼が「何言ってるんだ!」とか怒り出しまして、
一緒にその彼が撮ってきた作品を、編集室で見ることにしたんです。

で、女が映ってる所見て、私がホラホラって窓の所示したら、彼真っ青な顔になって、
「こんな物撮ってない」「俺は知らない」って言って、
そのまま帰っちゃったんですよ。

で、私は一人編集室に取り残されまして、
「最後まで芸達者な奴だなあ」とかニヤニヤしながら、彼の撮った窓の外の女の映像を見ていたんですが、
そこで気付いたんです。
映ってる教室の窓の大きさから逆算すると、その女、顔の大きさが70cmぐらいある計算になるんです。


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